ギターのフレットって、メンテナンスや交換ができることを知っていますか?
ギターを弾いているとフレットが汚れたりすり減ったりします。そのため、普段からしっかりケアしておくことが大切です。
この記事では、ギターのフレットの種類と特性、選び方、交換手順、ケアの方法を解説します。記事を読めばフレットへの理解が深まり、フレットの適切なメンテナンス方法と交換手順まで理解できます。
ギターのフレットの基礎知識

フレットとは、ギターの指板に取り付けられている棒状の金属です。フレットの位置は計算して配置されているため、指板を指で押さえるだけで正確な音程が奏でられます。
フレットは、形状や材質によって演奏しやすい音楽スタイルが変わります。

僕は最近まで知りませんでしたが、フレットって材質やサイズの違いがあるんです。
フレットの基礎知識として以下を解説します。
- フレットの役割
- フレットの材質と特徴
- フレットのサイズと形状の違い
ギターを長期間弾いていくとフレットが摩耗します。フレットが摩耗すると音がビビったりチョーキングやスライドなどの演奏がしにくくなります。そのため、定期的なメンテナンスが必要です。
フレットの役割
フレットの役割は、正確な音程を美しい音色で奏でることです。
もしギターにフレットが無かったらコードを弾く楽器として成立しませんし、演奏する難易度は上がっていたと思います。
フレットがあるおかげで指板を押さえる位置がわかり、きちんとメンテナンスされることで弾きやすくなります。
フレットの材質と特徴

ギターのフレットは、材質が選べます。
選ぶ材質によって、ギターの音色や演奏スタイルに影響を与えますので、注意して選びましょう。
代表的なフレットの材質と特徴は以下のとおりです。
材質 | 特徴 | デメリット |
ニッケルシルバー | 最もポピュラー 柔らかく暖かみのある音 | 柔らかく摩耗しやすい |
ステンレス | 消耗しにくい 明るくクリアな音 | 音がかたい 値段が高い |
エボリューションゴールド | 硬度があり摩耗しにくい 音質はかたすぎず、暖かみのある音 ニッケルシルバーとステンレスのいいとこ取り | ステンレスより高価 |
求める音色や演奏スタイル、予算を考慮してフレットの材質を選びましょう。
フレットのサイズと形状の違い
市販されているフレットの高さは1.0mm〜1.4mm、幅は2.0mm〜2.8mmです。高さが1.0mm、幅が2.0mmのものは「スモールフレット」、高さが1.4mm、幅が2.8mmのものは「ジャンボフレット」と呼ばれます。
フレットの高さと幅の目安はこんなかんじです。
低い | 1.0mm |
普通 | 1.2mm |
高い | 1.4mm |
細い | 2.0mm |
普通 | 2.4mm |
太い | 2.8mm |
たとえば、JIM DUNLOP社のフレットサイズは次のようなものがあります。
ギターフレットサイズ(JIM DUNLOP基準)
- 6100(ジャンボ):高さ 1.40mm / 幅 2.79mm
- 6105(ミディアム):高さ 1.40mm / 幅 2.29mm
- 6230(スモール):高さ 1.08mm / 幅 1.99mm
一般的に、フレットのサイズが小さいと木の鳴りが強くヴィンテージ志向、大きいとフレットの金属っぽい音が目立つためテクニカルなプレイが好まれます。
フレットのサイズや形状は、ギターを演奏する際の感触や音色に影響します。フレットの幅が広いタイプは、指の力をあまり入れずに弦を押さえられるため、演奏しやすいです。フレットの高さが高いタイプは、少ない力で弦を押さえられるため、ビブラートがしやすいです。
フレットが低いタイプは、木の鳴りがよく感じられるのでヴィンテージ志向の方に好まれます。フレットの形状はさまざまで、丸みを帯びたものや平らなものなどがあります。フレットは、演奏スタイルや求める音色に合うものを選びましょう。
ギターのフレットの種類と特性

ギターのフレットのサイズの特徴を、ひとつずつ紹介します。
ギターのフレットサイズの選び方で、ギターの演奏スタイルや音色は大きく変化します。
- ミディアムジャンボフレット
- ジャンボフレット
- スモールフレット
フレットサイズに加え、ニッケルシルバー、ステンレス、エボリューションゴールドの材質を選びましょう。
自分の演奏スタイルや求める音色に合ったフレットサイズ・材質を選ぶと、演奏の質が向上します。
ミディアムジャンボフレット

ミディアムジャンボフレットは標準的なサイズで、多くのギタリストが使用しています。メーカーによって呼び方はさまざまで、スタンダードフレット・ミディアムフレットとも呼ばれます。
大きさはスモールとジャンボの間のサイズで、演奏のしやすさと音質のバランスが取れている点が特徴です。
バランスが良いため、さまざまなジャンルの音楽に使用されます。ミディアムジャンボフレットは、幅広いプレイスタイルに対応できます。
ジャンボフレット
ジャンボフレットは、大きくて太いフレットです。フレットの高さがあるので弦を押さえる力が軽く済み、速弾きなどの演奏に好まれます。フレットが大きいため、音質はフレットの金属音のニュアンスが強く出ます。
フレットの高さが高いとビブラートやチョーキングなどのテクニックがしやすいため、表現の幅が広がります。音の持続性(サステイン)も向上するので、繊細な表現も楽しめます。しかしサイズが大きいため、初心者向けではありません。
ジャンボフレットは、多くのロックギタリストに好まれています。音楽の表現に深みを加えたい方には、ジャンボフレットが適しています。
スモールフレット
スモールフレットは、幅と高さが小さいフレットで、特にヴィンテージギターやクラシックギターに多く使用されます。フレットのサイズが小さいため、指板にしっかりと指が当たりやすく、繊細なタッチでの演奏が可能です。
フレットが低いため、弦を押さえる力のコントロールがしやすく、コード弾きやアルペジオなどの演奏に適しています。また、フレットの金属音のニュアンスが控えめで、ナチュラルな音色が得られる点も特徴です。
しかし、フレットの高さが低いため、チョーキングやビブラートの際に指板に触れやすく、テクニックによっては演奏のしづらさを感じることもあります。そのため、速弾きや派手なギタープレイよりも、繊細で丁寧な演奏を求めるギタリストに適しています。
スモールフレットは、ジャズやクラシックなど、落ち着いた音色を重視するジャンルでよく使用されます。指板のフィーリングを大切にし、ナチュラルな演奏を求める方にはスモールフレットが向いています。
ギターのフレットの選び方と購入方法

ギターのフレットの選び方と購入方法について以下を解説します。
- ギターのフレット選びのポイント
- 各フレットタイプのメリットとデメリット
ギターのフレット選びのポイント
ギターのフレットは、プレイスタイルと使用するギターの特性に合わせて選ぶのがおすすめです。
まずはフレットサイズの選び方は次のようになります。
- ヴィンテージ感や生感を出したい → スモールフレット
- テクニカルな演奏をしたい → ジャンボフレット
- オールラウンド型 → ミディアムフレット(ミディアムジャンボフレット)
フレットの材質の選び方は次のようになります。
- 音の温もりを大事にしたい → ニッケルシルバー
- 長持ちさせたい → ステンレス
- 暖かみのある音で、尚且つ長持ちさせたい → エボリューションゴールド
フレットは主に楽器店や、サウンドハウスなどの通販で購入できます。
Jescar、Jim Dunlop、Freedomなどが有名なメーカーです。オンラインショップで購入する際は、商品のレビューや評価を確認してください。
一番ポピュラーで人気のあるスタンダードなフレットはこちら!
ジャンボフレットが良い方はこちら!
スモールフレットが気になる方はこちら!
JIM DUNLOP ( ジムダンロップ ) / 6230
上記は3つともニッケルシルバーですが、他の素材をお求めの方はリンク先から探してみてください。
フレットの耐久性や音の鳴りも、材質によって異なるため、特性を理解して選びましょう。
各フレットタイプのメリットとデメリット
各フレットタイプのメリットとデメリットは以下のとおりです。
フレットタイプ | メリット | デメリット |
ミディアムフレット | 広いプレイスタイルに適応できる オールラウンド型 | 特定の演奏技法や音楽ジャンルに対応できない |
ジャンボフレット | チョーキングやビブラートがやりやすい ロックギタリストにおすすめ | 細かい音のニュアンスを出すのが難しい |
スモールフレット | コード弾きやアルペジオがやりやすい ヴィンテージギターやクラシックギター向け | 長く弾いていると指板がえぐれることがある |
音質や演奏に影響を与えるため、プレイスタイルや好みに合ったフレットを選ぶことが重要です。
ギターのフレット交換方法

ギターのフレットを交換する方法は、次の2種類があります。
- 楽器店やリペア専門店に依頼する
- 自分で交換する
おすすめは「楽器店やリペア専門店に依頼する」です。
なぜなら、自分で交換作業するにはかなり専門的な知識が必要だからです。
苦労して完了できても、弾きにくかったり音が良くなかったら嫌ですよね。
しかし「作業自体に興味がある方」はぜひご自身でのフレット交換にチャレンジしてみてください。
では、順番に紹介します。
楽器店やリペア専門店に依頼する
大手の楽器店にフレット交換を依頼する場合、相場は4万円~5万円台です。
リペア専門店だと3~4万円くらいのところもあります。
個人でやられている工房などに直接依頼する場合もう少しお安くしていただけるところもあると思います。
また、フレット交換にかかる日数はおおよそ7〜10日かかると言われています。
ライブの直前ではなく、余裕を持ったスケジュールで依頼しましょう。
フレットを自分で交換する
フレットを自分で交換するには、専用の道具と知識が必要です。
道具とは、フレットを「抜く」「打つ」「切る」ものです。

僕は実際やったことはありませんが、難しいので最初はほとんど使わない安いギターなどで試すと良いと言われていますね。
次章で、使用する道具や手順をかんたんに紹介していきます。
ギターのフレットの交換手順と道具

ここでは、ギターのフレットの交換手順と使う道具について解説します。
- 必要な道具と材料
- フレット抜きの方法
- 新しいフレットの取り付け
- フレットの調整とフィニッシング
フレット交換に必要な道具と手順を理解し、適切な方法で交換してください。
必要な道具と材料
ギターのフレットの交換に必要な道具と材料は以下のとおりです。
- フレットバー
- フレットカットニッパー
- フレットハンマー(ゴムハンマーでもよい)
- ゴムブロック(ハンマーで打つ土台)
- 紙やすり(#1000と#1200)
- 当て木(紙やすりを使うとき用)
- フレットエッジやすり
- マスキングテープ(指板を保護するため)
- オレンジオイル(指板が乾燥で割れないように)
専門的な道具やメンテ用品はサウンドハウスで購入できます。
定番のニッケルシルバーのフレットならこちら。
フレット抜きからタング処理、端カットまでこなせるフレットカットニッパーはこちら!
HOSCO ( ホスコ ) / TL-FC190
楽器用のオレンジオイルならこれ!
紙やすりやマスキングテープは100均で、土台のゴムブロックや紙やすりはホームセンターで調達できます。

DIYが好きな方ならゴムハンマーはご自宅にあるかも。
すべて揃えて10000〜15000円くらいです。
お店に頼んで4、5万すると考えると圧倒的に安く済みます。そのぶん根気のいる作業なので、最後までがんばってください。
フレット抜きの方法

フレットを抜く作業は、フレットカットニッパーを使い、以下の手順で行います。
- 指板にオレンジオイルを塗布する
- ニッパーでフレットの端を持ち上げる
- フレットをゆっくりと抜き取る
- すべてのフレットを抜き取る
ギターのメンテ用品のオレンジオイルをキッチンペーパーなどに染み込ませ、指板に塗っていきましょう。事前にオレンジオイルを塗布することで、フレットを抜くときに指板が割れにくくなります。
フレットを抜くときはフレット抜き専用のニッパーを使います。まずフレットの端だけを少しかませるようにしてニッパーを握ると端が浮きます。
端が浮いたら徐々に位置をずらしながら握っていきます。そうすると握った箇所が浮いていき、抜くことができます。
抜きにくいときはフレットを挟み前後に揺らすことで抜くことができます。
ニッパーでフレットを握った状態で上に持ち上げるのはやめましょう。指板が割れる原因になります。
フレットの抜き取りが難しい場合は、加熱して接着剤を緩めると効果的です。温め方は「はんだごて」を使うと良いですが、アイロンでもいけそうです(フレット部分が50〜60℃に温められれば良い)
新しいフレットの取り付け
新しいフレットを取り付ける手順は以下のとおりです。
- 古い接着剤や汚れを取り除く
- フレットを指板に合わせて曲げる
- 新しいフレットを、ギターのネックに合わせて切断する
- フレットを挿入し、ハンマーで軽く叩いて固定する
- フレットエッジやすりで角を整える
ギターの指板にはカーブがあり(Rという)このRの形に合わせてフレットを曲げる必要があります。
ニッケルシルバーのフレットであればペンチで曲げることができます。(ステンレスフレットは硬いので専用の工具が必要)2つのペンチでフレットの両端を持ち、力を入れてググッと曲げましょう。
ギターのネックの幅に合わせて切断するときは、まずタング(指板に埋まる部分)からカットします。タングの幅をフレットに合わせてカットしたらフレットを指板に挿入し、ハンマーで叩き固定してから、余ったフレットをカットします。
飛び出ている部分をフレットエッジやすりで削り、整えます。
ギターのフレットのメンテナンスとケア

「以前より弾きにくくなった」とか「チョーキングしにくくなった」などのお悩みは、もしかしたらフレットをケアすることで解決するかもしれません。

フレットが汚れていたりすり減ったりすると、見た目が悪くなるだけでなく弾きにくくなります。
ギターのフレットのメンテナンスとケアは、ギターを長く使うためには欠かせません。フレットの状態が良好だと演奏しやすくなりますし、音の響きがクリアになります。
フレットのメンテナンス方法について以下を解説します。
- 日常のフレットケア
- 研磨剤で磨く
- フレットすり合わせ
日常のフレットケア
ギターを弾き終わったあとは、必ず柔らかい布を使ってギターについた指紋などの汚れを拭き取りましょう。特に指板やフレット、ボディの汚れはつきやすいので愛情を込めてケアしましょう。
弦を交換するタイミングは、フレットをケアするチャンスです。クロスにレモンオイルを染み込ませ、弦をすべて外した状態で指板やフレットを掃除しましょう。
研磨剤で磨く
フレットの曇りがあり、拭いても取れなくなってきたら研磨剤で磨くとピカピカにすることができます。
楽器用の研磨剤とマスキングテープ、クロスをご用意いただき以下の手順で行います。
- マスキングテープでフレット周囲の指板を保護する
- 研磨剤をクロスに染み込ませる
- 研磨剤を染み込ませたクロスでフレットを磨く
- 残った研磨剤をクロスで拭き取り、マスキングテープを剝がす
フレットすり合わせ
ギターを長く弾いていると、フレットがすり減ってきます。よく押さえるフレットは減り方が早く、逆にあまり押さえないフレットはほとんど減りません。
フレットの減り方によっては演奏がしにくくなるため、それを解消するメンテナンスが「フレットすり合わせ」と呼ばれます。

弦のビビりが出たりチョーキングしにくかったりしたら、フレットすり合わせを行う必要があるかもしれません。
「一番すり減ったところに合わせて平らにする」作業なので、減りすぎているとフレット交換が必要になります。
フレットすり合わせの依頼はだいたい1万円前後です。
ギターのフレットの交換時期とサイン

ギターのフレットが摩耗しているサインと交換のタイミングについて解説します。交換のサインが見られる場合、フレットの交換を検討してください。フレットの状態を定期的にチェックして、必要な場合は専門家に相談しましょう。
フレットの交換時期
日常的に弾いているギターであれば、フレット交換時期は一般的に5~8年と言われています。フレットが減ってきてもすぐに「フレット交換」にはなりません。
フレットが減ってきたらまずは「フレットすり合わせ」をします。
2~3年に一度のすり合わせをしたのちにフレット交換になります。
フレットすり合わせが1万円だとすると、フレット交換にかかる費用は4~5万円ほどです。

高額なので、頻繁にはフレット交換したくないですよね。
また、摩耗が進行するとチューニングが安定しなくなります。普段からのケアやメンテナンスをしっかりしてあげることで、フレットの寿命を延ばせます。
» 演奏の質をアップさせる!ギターのチューニング
フレット交換のサイン・タイミング

前にフレットすり合わせをしたから、今度はフレット交換かな。
そろそろフレット交換かな、という見極めのタイミングは「目視・音の雰囲気・弾き心地」で判断できます。具体的には以下の通りです。
- サビや凹凸が多い
- 音のビビりが気になる
- チューニングをしても、フレットを押さえるとピッチが合わない
- スライド・チョーキングがしにくい
このような状態であればフレット交換を検討するタイミングです。
楽器が良い状態だと、弾くことがさらに楽しくなります。ご自身のギターを適切にメンテナンスし、良いコンディションを保つようにしましょう。
まとめ

ギターのフレットは、その状態や種類によってサウンドや弾きやすさが大きく変わってくる大切な部品です。ステンレスやニッケルなどの素材や、サイズや形状の違いによって、ギターのトーンや演奏感が変わります。自分の好みやプレイスタイルに合ったフレットを選ぶことが大切です。
日々のメンテナンスをしつつ、必要なときはフレットすり合わせやフレット交換という選択ができるようにしましょう。
楽器をいい状態で保つと弾くのが楽しくなるので、上達のスピードもあがります。あなたの音楽ライフがさらに彩られることを祈っています。
» 初心者向け!ギターの基本的な操作方法と練習方法