自宅で歌ったりギターを弾いたりしたいけど、周囲から苦情が出るからできないと悩む方は多いです。上手な防音ができると自宅でも気にせず音を出すことが可能です。
実は、住宅での音の出入りの大半は「窓」「ドア」「壁」からです。
家の断熱性も同じで、家のあたたかさや涼しさなどの50%以上は「窓」や「壁」から出ていきます。
つまり防音性の高い部屋をつくることで、住みよい空間もつくれてしまうというわけです。
この記事では、専門知識がなくても実践できる防音室の作り方を解説します。手軽な方法から本格的な改修まで、さまざまな防音テクニックを紹介します。
お金をかけずに効果的な対策や借家でもできる方法などを紹介するので、あらゆる状況に対応可能です。記事を読めば、静かで快適な自宅環境を作り、日々の生活をもっと楽しめるようになります。
防音とは遮音や吸音などの総称
防音とは外からの音を遮り、中の音が外に漏れるのを防ぐ技術です。主に遮音と吸音の2つの方法があり、うまく組み合わせると効果的な防音ができます。
遮音と吸音の違い
遮音と吸音は、どちらも防音対策の一種です。音の性質や防音目的に合った素材を使用しましょう。室内の音を整えたり、外部からの騒音を室内に入ってこないようにしたりできます。
遮音は、材料を通して音を遮り音を弱める方法です。空気中を伝わってくる音を跳ね返して音を遮断します。防音材を使用することで、外部からの騒音を室内に入らないようにできます。自室から出る音を外に通さないことも可能です。
吸音は、音のエネルギーの一部を熱エネルギーへ変えて、音を小さくさせる方法です。吸音材を使用して部屋内の響きを抑えます。吸音材は多孔質(無数の穴が開いている状態)なので反射する音が小さく、吸収されて熱エネルギーに変換される割合が多いです。
遮音と吸音の材料は異なります。遮音材は、重くて密度の高い材料で主に石膏ボードや鉛シートなどを使います。吸音材は、柔らかく多孔質な材料でグラスウールやウレタンフォームなどです。
高い防音効果を得るためには、吸音材と遮音材を両方使わなければなりません。壁に遮音材を貼って外部への音漏れを防ぎ、上に吸音材を重ねて室内の反響音を防ぐ方法などがあります。
初心者でも簡単に防音室を作る方法
自宅で音楽を楽しんだり映画を観たりするときに、周りに迷惑をかけずに済む防音室はとても便利です。
以下の方法なら専門的な知識や高いお金をかけなくても、簡単な方法で防音室を作れます。
- 本棚や家具を利用する
- 布団や毛布を使って窓を覆う
- ドアの下部にストリップを設置する
- 隙間テープを使用する
- 防音カーテンを設置する
- 防音シートや吸音パネルを使用する
- 粘着式防音材を使用する
- 防音マットを敷く
本棚や家具を利用する
本棚や家具の利用は、素人でも簡単に防音効果を得られる方法の1つです。部屋の隅に本棚を置き、壁にぴったりつけると壁からの音漏れを減らすことが可能です。本棚の裏側に吸音材を付けると本棚自体の遮音性能が上がり、より高い防音効果が期待できます。
大きな家具を適切に置くと、部屋全体の反響音を抑えることが可能です。音が直接外部に伝わることを遮るので、間接的でも効果的な防音対策になります。家具と壁の間に少し隙間を作って吸音材を入れると、防音効果を高められます。
家具の配置を工夫する際は、部屋の出入りのしやすさや生活動線も考慮しましょう。防音効果を高めつつ、快適な暮らしができるレイアウトを目指すことが大切です。
布団や毛布を使って窓を覆う
窓を布団や毛布で覆うのは、簡単で効果的な防音対策です。外からの音を遮る上で、窓は重要なポイントになります。布団や毛布を使えば、日常生活で気になる騒音を想像以上に減らすことが可能です。窓に布団や毛布をかけるときは厚手のものを選び、窓全体をしっかり覆います。
窓枠に固定する際にはマジックテープや両面テープが便利です。隙間なくしっかり固定でき、外からの音の侵入を効果的に防げます。借家で大きな改修ができない場合にも布団や毛布は適しています。取り付けも取り外しも簡単なので、一時的な防音対策として優秀です。
静かな部屋の環境が必要なときは、ぜひ試してみることをおすすめします。しかし、布団や毛布を使う方法は見た目が気になる場合があります。来客時や日中は普通のカーテンに戻し、夜間や必要なときだけ布団や毛布を使うなど、状況に応じて使い分けることがおすすめです。
ドアの下部に隙間カバーを設置する
ドアの下部の隙間も音が漏れやすいポイントです。隙間を埋めるための効果的な方法として隙間カバーの設置があります。隙間カバーを設置することで、ドアを閉めると自動的に床との隙間を埋めます。
隙間カバーを設置する際は、ドアの材質や床の状態に合わせて適切なタイプを選びましょう。ドアの開閉に支障がないよう、適切な長さと高さに調整することも重要です。
ドアの隙間カバーは防音だけでなく、防寒や防塵にも効果があります。外部に面したドアに設置すると、屋外からの音や空気の侵入を効果的に防げます。季節や用途に応じて、取り外しや交換が容易なタイプを選ぶのも手段の1つです。
ドア下の隙間をカバーするだけではほぼ効果はありませんが、ドア横側と上側の隙間を埋める「隙間テープ」を併用することで防音効果を発揮します。
隙間テープを使用する
隙間テープは、ドアや窓の隙間を埋めるための専用のテープです。自分で簡単に貼れるのでDIY初心者でも気軽に使えます。隙間テープは音漏れを防ぎ、外からの騒音が入ってくるのを減らすのに効果的です。さまざまな厚さや幅が販売されており、自分の必要に合わせて最適なものを選べます。
貼った後は見た目もすっきりとし、部屋の見栄えを損ないません。隙間テープを選ぶときは、ドアや窓の色に合わせたものを選ぶと見た目がよくなります。少し高価になりますが、耐久性の高いものを選ぶと長期間効果を維持できます。
隙間テープを貼る前に、ドアの接着面をよく拭いてきれいにしておくとテープが剥がれにくく長持ちします。
Meciayn 隙間テープ D型 3.5-5.5mmすきま対応 5m x 2本 (茶色)
僕の自宅の簡易防音室のドアはおそらくこれと同じタイプのものをつかっています。
上下左右に貼っていて、ゴムみたいな感触で押すとぷよぷよします。
自宅の他のドアと比べて防音効果は抜群によく、5年経った今でも不具合はありません。
東京防音 防音すきまテープ TP-200
厚さ3mmで薄めなので、割とどのドアでも使えるタイプかと思います。
使い勝手はよさそうですが、防音効果はそこまで高くなさそうです。
防音カーテンを設置する
防音カーテンは騒音対策に効果的です。外からの騒音や中の音が漏れるのを防ぎたい場合に役立ちます。最大限の防音効果を得るためには、厚くて重い素材を選ぶのが効果的です。重くて厚いほど音を遮る効果が高くなります。光を遮る機能も付いたカーテンを選べば、音と光の両方を遮断可能です。一石二鳥の効果が得られます。
カーテンを使った防音のポイントは以下のとおりです。
- カーテンの大きさは窓より少し大きめにする
- 窓全体を覆うように付ける
- カーテンの重さに耐えられる強いカーテンレールを選ぶ
- 複数のカーテンを重ねて防音効果を高める
しかし、防音カーテンは通常のカーテンより重いため、カーテンレールや壁への負担が大きくなります。取り付け前に壁やレールの強度を確認し、必要に応じて補強しておきましょう。
防音シートや吸音パネルを使用する
防音シートと吸音パネルを使うと、部屋の音の環境を大幅に改善できます。防音シートと吸音パネルはそれぞれ違う働きをするので、組み合わせて使うと効果的な防音が可能です。
防音シートは重い材質で外からの音の侵入を防ぎます。主に壁やドア、窓に付けて使います。車の多い道路に面した部屋や騒がしい地域の家に効果的です。二重に使うと防音効果を高められます。
吸音パネルは部屋の中で出る音を吸収し、反響やこもった音を減らします。音楽スタジオや映画を観る部屋など、きれいな音質が求められる場所に最適です。見た目のよい製品も多く、部屋の雰囲気を損なわずに防音対策ができます。
シートとパネルをうまく組み合わせることで外の騒音を遮り、部屋の中の音質も良くできます。防音シートや吸音パネルを選ぶ際は、部屋の大きさや形、主な用途を考慮しましょう。火災安全性にも注意を払い、難燃性の製品を選ぶことがおすすめです。
粘着式防音材を使用する
粘着式防音材は、簡単に貼れるのが大きな魅力です。特別な道具や大がかりな設備がなくても、DIY初心者でも手軽に防音対策ができます。壁や天井、ドアなど、いろいろな場所に貼れて、必要な大きさに切って使えるのも便利です。
粘着式防音材は音を効果的に遮る性能があり、外からの騒音を効率よく減らせます。長持ちする性質もあり、一度貼れば長い間性能を保てるので、1回の作業で長く快適な環境を維持できます。
注意点として、粘着式防音材を貼る前に表面をきれいに掃除しましょう。ほこりや油分があると、粘着力が低下します。室温が低すぎると粘着力が弱くなることがあるので、作業中は室温を少し温かくしておくのもおすすめです。
防音マットを敷く
防音マットを使うと、床からの音の伝わりを効果的に抑えられます。マンションやアパートに住んでいる人にとって、上の階からの音を抑えるために防音マットの使用がおすすめです。自分の足音が気になる場合は床に敷くこともできます。
防音マットは厚さや材質によって防音効果が違い、多くは自分で簡単に切って敷くことが可能です。長持ちする性質があるので、長期間効果を保てます。見た目のよい製品を選べば、部屋の雰囲気を損なわず、実用性と見た目の両方で満足できる結果が得られます。
防音マットを敷く際は床の材質や構造を考慮しましょう。フローリングや畳など、床の種類によって適した防音マットが異なることがあります。マットの厚さによっては扉の開閉に影響が出る可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。
防音対策を施すべき部屋のポイント
防音対策は快適な生活空間を作る上で大切な要素です。日常生活で音の問題を完全になくすことは難しいですが、各場所に特別な注意が必要です。
以下のポイントごとの防音対策を解説します。
- 壁
- 床
- 天井
- 窓
- ドア
壁
壁は部屋の境界として外の騒音を遮り、音が外に漏れるのを防ぎます。防音対策として壁に吸音材や防音材を付け加えるのが一般的です。音の振動を効果的に吸収し、音を遮る性能を高められます。二重壁にしたり遮音シートを貼ったりすると効果的です。
壁にできた隙間や割れ目は、思わぬ音漏れの原因になるので、適切に修理や補強をする必要があります。
床
床の音は隣の部屋や下の階へ伝わりやすいので、床の防音対策はしっかり行う必要があります。防音マットやカーペットを敷くと音を遮ることが可能です。重いマットや特殊な防音材を使うと、より高い防音効果が期待できます。床と壁がつながる部分には防音用のシーリング材を使うと、隙間からの音漏れを防げます。
床の防音対策を行う際は部屋の用途も考慮しましょう。ピアノなどの重い楽器を使用する場合は、床の振動を抑える特殊な防振マットの使用も検討するのもおすすめです。
天井
天井からの音漏れを防ぐためには適切な防音材料を選ぶことが重要です。天井に吸音パネルやフォームを付けると、部屋の中のこもった音やエコーを効果的に減らせます。天井の中に重い断熱材を入れると、上の階からの音の伝わりを抑えられます。
防音シートや防音マットを追加すれば、効果的に音を遮断可能です。天井全体を防音材で覆うことで、隙間からの音漏れも防げます。天井の防音対策を行う際は、照明器具や換気扇などの設備に隙間なく設置することを意識しましょう。
残念ながら、天井の防音に関してはDIYでは難しいです。
どうしても必要な場面があれば業者に依頼しましょう。
窓
窓からの音漏れを防ぐためには、窓の構造や材質の選び方が大きく影響します。二重窓や防音ガラスを使うと、外からの音の侵入を大幅に減らせます。窓の枠の周りの隙間を防音テープでふさぐのも効果的です。
僕が以前住んでいた家は古かったので、録音するときには雨戸を締め切っていました。暗くなりますが、防音効果は抜群です。
他にも、防音カーテンやブラインドを付けると簡単に窓からの音の伝わりを減らせます。窓の防音対策を行う際は換気にも注意を払いましょう。防音性を高めると同時に、適切な換気システムを設けることで、快適で健康的な室内環境を維持できます。
ドア
ドアの隙間からの音の侵入や音漏れは、防音性能に大きく影響するので適切な対策が必要です。ドア自体の場合、重量と厚みがあるほうが防音性は高くなります。
手軽にできる防音対策としては以下のとおりです。
- ドアの隙間に隙間テープを貼る
- ドアの下部に防音用のストリップを付ける
- ドアの内側に防音材を付け加える
ドアの開閉音が気になる方は、ドアクローザーの調整やドアの縁に防音ゴムを取り付けることで、開閉時の音も軽減できます。
防音室の作り方に関するよくある質問
防音室をDIYで作ろうと考えている方のために、よくある疑問と答えをまとめました。
- どの部分から防音対策を始めるべき?
- 防音室のDIYにかかる費用の目安は?
- 防音対策で注意すべきポイントは?
上記の情報を参考に、効果的な防音室作りを計画しましょう。
どの部分から防音対策を始めるべき?
防音対策を始める際は、音の侵入経路を考慮して優先順位を決めることが大切です。防音対策の優先順位は「窓→ドア→壁」の順番となります。窓は最も音が入りやすい場所なので、防音ガラスへの交換や厚手の防音カーテンの設置を優先しましょう。
次にドアです。ドアは下部の隙間から音が漏れます。ドアストリップや隙間テープで対策しましょう。
壁・天井・床は隣室や上下階からの音を遮断します。優先度は窓やドアより低めですが、理想の防音環境を得るためには無視はできません。
隣接する部屋の用途や外部環境に応じて、重点的に対策する箇所を判断するのがコツです。
防音室のDIYにかかる費用の目安は?
防音室のDIY費用は、目指す防音レベルや部屋の大きさによって大きく変わります。防音カーテンや隙間テープなどの簡易的な防音設備だと数千円〜数万円で済みます。壁・天井・床への高性能防音材の施工などの本格的な防音だと数十万円以上の出費は覚悟しましょう。
DIYの場合、材料費に加えて必要な工具代も考慮します。既存の部屋を改修する場合は、解体や再構築の費用が発生する可能性も無視できません。予算計画を立てる際は、必要な材料や工具のリストを作成し、余裕を持った見積もりを取りましょう。
防音対策で注意すべきポイントは?
防音対策を行う際には、いくつか注意するべきポイントがあります。最も重要なのは適切な材料の選定です。音の伝わり方に影響を与える素材を選ぶことで、効果的に音を遮断できます。重い素材は音の伝達を阻害するため、防音性能が高くなるのでおすすめです。
壁、床、天井の隙間をしっかりと無くすことも重要です。小さな隙間からも音は漏れるため、完全に封じる必要があります。施工後は防音効果を確認し、必要に応じて追加対策を行うことも大切です。
法規制との整合性を確認することも忘れてはなりません。建築基準法などの法的な規制に則った防音対策を施すことが求められます。長期的なメンテナンス計画を立てることが望ましいです。時間が経過すると防音性能が低下することがあるため、定期的なチェックとメンテナンスが欠かせません。
【裏技】クローゼットを防音室として使う方法
住宅事情や金銭事情などによりどうしても防音対策できない場合、自宅のクローゼットを防音ブースとして改造する方法もあります。
クローゼットには「窓」がなく、余計な反響音もありません。実は録音するには最適な場所なのです。
ただクローゼット内部には空調がありませんので、こまめに休みつつ酸欠などには十分注意しましょう。
ウォークインではないクローゼットの場合、床の強度を確認してから足を踏み入れるようにしてください。
まとめ
防音室は快適な居住空間を作るために有効な手段です。都市部では、外部からの騒音に対処することが不可欠です。防音には遮音と吸音の2つのアプローチがあり、異なる機能を持ちます。防音室を自作する際は壁や床、天井、窓、ドアといった部屋のさまざまな部分に注意を払い、適切な材料と方法を選ぶことが重要です。
初心者でも簡単にできる対策方法を講じれば、費用を抑えつつ効果的な防音を実現できます。記事を参考に、自分の生活環境に合った防音対策を見つけてください。
» 「歌ってみた」の作り方完全ガイド
» 弾いてみた動画の作り方を解説!