歌を楽しむうえで欠かせないのが「正しい発声」です。
発声法を身につければ声量や表現力がぐっと高まり、歌唱力の向上につながります。
しかし、多くの人が自己流で練習してしまい、上達のチャンスを逃しているのも事実です。
この記事では、初心者でも取り組める発声練習の基本から、効果的な練習方法、さらに継続のコツまでわかりやすく解説します。
ポイントとなるのは「姿勢」と「呼吸法」。
基礎を正しく理解すれば、あなたの歌声は確実に変わっていきます。
正しい発声練習の基本

発声練習を効果的に行うためには、いくつかの基本をしっかり押さえておくことが大切です。
これらを意識するだけで、歌声や話し方は驚くほど変わっていきます。
特に大切なのは以下の4つのポイントです。
- 正しい姿勢
- 腹式呼吸
- 声帯のケア
- 滑舌のトレーニング
それぞれが発声に大きく関わっているので、順番に解説していきます。
» 自宅でできる!歌がうまくなる具体的な方法を解説
正しい姿勢
正しい姿勢は、発声練習の基本中の基本です。
姿勢が整うことで呼吸がスムーズになり、声の響きや安定感が大きく向上します。
正しい姿勢のポイントは次のとおりです。
- 背筋をまっすぐに伸ばす
- 足は肩幅に開く
- あごを軽く引く
- 胸を開く
- 腕は力を抜いて自然に垂らす
これらを意識することで、声帯や呼吸器に余計な負担をかけず、自然な発声が可能になります。
姿勢を身につけるコツは、練習中だけでなく日常生活の中でも意識すること。
デスクワーク中や歩いているときに背筋を伸ばしたり、鏡で自分の立ち姿をチェックしたりすると効果的です。
発声のためだけでなく、肩こりや腰痛の予防といった健康面にもつながるので、ぜひ日常に取り入れてみましょう。
腹式呼吸
腹式呼吸は横隔膜を使った呼吸法で、「歌を歌うとき」や「管楽器を吹くとき」には欠かせない基礎的な技術です。
習得すると声量や声質が安定し、表現力がぐっと高まります。
ポイントは胸や肩は上下せず「お腹」だけがふくらむように息を吸い、お腹をへこませながらゆっくり吐き出すことです。
胸式呼吸よりも深く息を取り込めるため、無理のない自然な発声が可能になります。
腹式呼吸の感覚をつかむまで、次のように練習すると効果的です。
- 仰向けに寝る
- お腹に手を置く
- 胸は上下せず、お腹だけがふくらむのを感じながら息を吸う
- ゆっくりと息を吐き出す
慣れてきたら、立った姿勢や座った姿勢でも練習してみましょう。
日常生活の中で意識的に腹式呼吸を取り入れると、上達が早まります。
さらに、ストレス軽減や集中力アップといった効果も期待できるので、音楽活動以外のシーンでも役立ちます。
» 歌が上手くなる腹式呼吸の練習方法を解説
声帯のケア

正しい発声を続けていくためには、声帯を守ることが欠かせません。
声帯の状態が悪いと、どんなに練習しても思うように声が出せず、かえって喉を痛めてしまうこともあります。
声帯を健康に保つためのポイントは次のとおりです。
- 水分をこまめに摂り、喉を潤す
- 室内の湿度を保つ
- 喫煙や過度な飲酒を控える
- 大声の出しすぎに注意する
- 長時間の会話や歌唱の合間に休憩をとる
また、喉を痛めているときにヒソヒソ声で話すと、かえって声帯に大きな負担がかかります。
そんな時は声を一切出さずに過ごしましょう。
適切に休ませながら練習を続けることで声の安定感が増し、発声練習の効果も高まります。
滑舌のトレーニング
滑舌を良くすると、発音が明瞭になり、歌詞がはっきりと伝わるようになります。
その結果、歌唱力が向上し、聴き手との共感も生まれやすくなります。
滑舌を改善するために効果的な方法は次のとおりです。
- 早口言葉を練習する
- 舌や唇の筋肉をほぐす
- 口を大きく開けてはっきり発音する
- 子音を強調して練習する
- 母音と子音のバランスを意識する
日常的にトレーニングを取り入れることで、少しずつ滑舌は改善していきます。
特に舌のトレーニングは「小顔効果」にも効果があるので、日常的に取り入れることをおすすめします。
舌のトレーニング
- 口の中で舌をぐるぐる回します(右回し10回、左回し10回)
- 舌を思い切りベーッと出して、思い切り引っ込めます(各10回ずつ)

僕は仕事中など思いついた時に、口の中で舌をぐるぐるさせています(マスクはつけています)
また、滑舌のトレーニングとして難しい単語や文章を繰り返し練習することで、発音がよりスムーズになります。
効果的な発声練習の方法

発声練習にはいくつかの基礎練習方法があります。
単体でも効果はありますが、組み合わせて練習することで声の安定感や表現力がぐっと向上します。
代表的な練習方法は次の4つです。
- リップロール
- タングトリル
- ロングトーン
- 母音法
これらは初心者でも取り入れやすく、基礎からしっかり声を鍛えられるトレーニングです。
ここから順番に詳しく解説していきます。
リップロール
リップロールは、唇を軽く閉じて「ブルルル」と震わせながら息を吐き出す発声練習法です。
低音→高音→低音という感じで、途切れず一息で一往復します。
これを何回か行うことで、喉や声帯の緊張がほぐれ発声しやすくなります。
リップロールの効果とポイントは以下のとおりです。
- 声帯や喉をリラックスさせる効果がある
- 低音から高音まで声を滑らかにつなげるのがポイント
- 音程をつけて練習することでコントロール力が向上します
リップロールをすることで声帯の緊張をほぐし、リラックスした状態で声を出すことができます。
さらに継続することで、声の安定感や柔軟性が高まり、歌唱中の息の流れもスムーズになります。
タングトリル
タングトリルは、舌を「ルルルル」や「ドゥルルルル」と震わせながら音を出す発声練習法です。

コrrrrrルアァァァァ!!!
みたいなのもタングトリルですね。「巻き舌」のことです。
声帯を柔軟にし、息の流れをスムーズにする効果があります。特に、声の響きを改善したい人におすすめです。
タングトリルのポイントは以下のとおりです。
- 舌の力を抜いてリラックスする
- 喉に余計な力を入れない
- 「ルルルル」「ドゥルルルル」と発音する
- 音程をつけて上下に動かしてみる
「ラ行」を上の歯に付け根にあてながら発声する練習方法もあります。
「とぅら・とぅり・とぅる・とぅれ・とぅろ」を各5回ずつ、上の歯にあてながら発音してみましょう。
タングトリルは道具も不要で取り組みやすいため、忙しい日々でも無理なく続けられる練習法です。
» 歌唱力が高くなるタングトリル(巻き舌)の練習方法を解説
ロングトーン

タングトリルの次は、その息を安定した声につなげる「ロングトーン」に取り組みましょう。
ロングトーンは、一定のピッチで声を長く伸ばす練習方法で、発声の基礎を固めるトレーニングです。
ロングトーンを行うことで得られるメリットは以下のとおりです。
- 肺活量が強くなる
- 腹式呼吸が自然にできるようになる
- 音程がブレなくなる
- 声質が安定する
ロングトーンの練習方法はシンプルです。
母音を使い、1音につき5〜10秒ほど声を伸ばします。
✔️ 出しやすい音程で「あーーー」と発声し5〜10秒ほど声を伸ばしましょう。
✔️ 慣れてきたらいろんな音程でロングトーンをしましょう。
✔️ ピアノがあれば「ド」から順番に弾きながら音程の上がり下がりをすると良いです。
コツは「無理をしない」こと。
喉に負担をかけすぎないよう注意しながら、毎日コツコツ続けましょう。
録音して自分の声を客観的にチェックすると、改善点が見えやすくなります。
ロングトーンは、安定した発声を身につけるうえで欠かせない基本練習です。
継続して取り組むことで、歌唱力は確実に向上します。
さらに次に紹介する「母音法」と組み合わせると、声の響きをより豊かに育てることができます。
母音法
ロングトーンで声の安定感を養ったら、次に試したいのが「母音法」です。
母音法は滑舌のトレーニングとしてナレーターの間でも使われます。
「言葉を母音だけに変換して声に出す」トレーニングです。
例えば「こ・ん・に・ち・は」を母音に変換して「お・ん・い・い・あ」と言い換えてみます。
このように母音で発声したときの口の形を覚えておきます。
その口のまま「こんにちは」と言い直すと、よりはっきり発音できているはずです。
これが母音法です。
母音法を続けることで、声の共鳴が高まり、歌唱力や話し方の明瞭さが向上します。
日常のいろいろな言葉を母音に変換するゲームにすると、楽しく滑舌トレーニングができるようになります。
シンプルながら発声の土台を築く重要な練習法なので、ぜひ日々のルーティーンに取り入れてみましょう。
自宅でできる発声練習

日本の集合住宅事情では、楽器や歌が自宅で十分にできないケースが多いです。
そんな環境でもできる発声関連の練習を紹介します。
特別な道具や広い場所がなくても、日常の中に取り入れやすいのが魅力です。
初心者からでも無理なく始められるおすすめの練習方法が3つあります。
- 声を出さずにできる練習
- 腹式呼吸の練習
- アプリを使った練習
順番に詳しく解説していきます。
声を出さずにできる練習
声を出さずに行う練習は、周囲に迷惑をかけずに発声の基礎を鍛えられる方法です。
自宅はもちろん、電車の中や職場の休憩時間など、場所を選ばずに実践できるのが魅力です。
おすすめの練習方法は次のとおりです。
- 舌の上下左右運動
- 顔のマッサージ
- 身体のストレッチ
舌や顔の筋肉を動かす練習は滑舌の改善につながり、喉を開いて声を出しやすくします。
また、ストレッチを行うことで筋肉がリラックスし、力まずに歌えるようになります。
このように、声を出さない練習でも発声に必要な筋肉や呼吸をしっかり鍛えられます。
毎日少しずつ取り入れることで実際に声を出す練習がスムーズになり、効果を感じやすくなります。
腹式呼吸の練習

声を出さない練習で基礎を整えたら、次は息のコントロールを養う「腹式呼吸」に取り組みましょう。
腹式呼吸は、正しい発声の土台となる呼吸法で、習得すると声量や声質が大きく向上します。
腹式呼吸のおすすめ練習方法
(すべて「息を吐ききる」ことが重要です)
- 前屈しながら息を吐く
- 直立して息を吐く
- 両手をギュッと握って体に力を入れながら息を吐き、吐ききったら脱力する
- 前傾から息を吐きながら起き上がり、吐ききったら再び前傾へ(×3回)
- 胸式呼吸で息を吐きながら前屈
- 前屈状態から息を吐きながら起き上がる
- 直立して息を吐く
①~③、④、⑤~⑦の3つのブロックに分けて考えるとわかりやすいです。
歌う前にこの呼吸法を取り入れるだけで、自然と正しい発声方法になります。ある程度ルーティーン化するのがおすすめです。

僕はLIVE直前には必ずこの呼吸法を行っています。それだけで緊張がほぐれます。
正しい腹式呼吸を身につければ、発声の基礎が固まり、歌唱力の安定した向上につながります。
地道な練習ですが、続けることで確実に成果を感じられるでしょう。
アプリを使った練習
自宅での発声練習をさらに効果的にしたいなら、スマートフォンやタブレットのアプリを活用するのがおすすめです。
アプリを使えば、正しい発声法を学びながら、楽しみながら継続できます。
代表的なアプリの活用方法は以下のとおりです。
- 音感トレーニングアプリ:音感を養い、正しい音程で歌う力を伸ばせる
- カラオケアプリ:好きな曲を使って実践的に練習でき、歌詞や音程も表示される
- ボイスレコーダーアプリ:録音した自分の声を客観的に聞いて改善点を把握できる
- メトロノームアプリ:一定のテンポで練習することでリズム感を鍛えられる
複数のアプリを組み合わせると、音程・リズム・呼吸などを総合的に鍛えることができます。
自分に合ったアプリを見つけ、無理なく継続することが上達の近道です。
» 音程がわからない原因とは?改善方法を詳しく解説
発声練習を継続するコツ

発声練習は一度やれば終わりではなく、継続することで確実に効果が表れます。
ところが、毎日同じことを繰り返すのは、途中で飽きたり面倒になったりしがちです。
そこで、ここでは無理なく練習を続けるためのコツを紹介します。
小さな工夫を取り入れるだけで、発声練習が習慣になり、歌唱力や声の安定感が大きく向上します。
日常の生活にうまく組み込んでいきましょう。
練習スケジュールを作成する
発声練習を習慣にするには、無理のないスケジュール作りが欠かせません。
計画を立てることで「今日は何をやればいいか」が明確になり、継続しやすくなります。
効果的なスケジュール作成のポイントは以下のとおりです。
- 毎日15〜30分程度を目安にする
- 週ごとにテーマを決める(例:月曜は呼吸法、火曜は滑舌…)
- 決まった時間帯で行い、生活リズムに組み込む
- リマインダーやアラームで練習を忘れない工夫をする
また、休息日を設けることも大切です。
声帯を休めながら練習と回復を繰り返すことで、より効果的に上達できます。
スケジュールは一度決めたら終わりではなく、定期的に見直すことで自分に合った計画へアップデートできます。
長期的な目標と結びつけると、練習へのモチベーションも保ちやすくなります。
小さな目標を立てる
発声練習を続けるには、大きな目標だけでなく小さな目標を積み重ねることが大切です。
小さな成功体験が自信になり、モチベーションを保てます。
おすすめの目標例は以下のとおりです。
- 音域を半音広げる
- 1週間毎日練習を続ける
- 好きな曲を1曲通して歌えるようにする
目標には数値や期間を設定すると達成度を実感しやすくなります。
例えば「今週はロングトーンを1音10秒キープする」など具体的にしましょう。
また、目標を達成したら小さなご褒美を自分に用意すると、練習が楽しくなります。
無理のない範囲で設定し、定期的に内容を見直してステップアップしていくと、自然に長期的な上達につながります。
発声練習に関するよくある質問

ここでは、発声練習を始めるときによく寄せられる疑問をまとめました。
初心者がつまずきやすいポイントをQ&A形式で解説しているので、練習を進める際の参考にしてください。
発声練習はどれくらいの頻度で行うべき?
発声練習は1日10〜15分程度が理想です。
短時間でも継続することで、声帯や呼吸筋が少しずつ鍛えられ、声の安定性や歌唱力の向上につながります。
初心者はまず週3回程度から始め、慣れてきたら徐々に回数を増やしていきましょう。
毎日行う場合でも、無理のない範囲で続けることが大切です。
練習のおすすめなタイミングは次のとおりです。
- 朝と夜にそれぞれ5分
- 通勤・通学中(声を出さない練習)
- 昼休みに軽くウォーミングアップ
過度な練習は声帯を痛める原因になるので注意してください。
体調や生活リズムに合わせて「無理なく続けられるペース」を見つけることが、上達への近道です。
喉が痛くなったときの対処法は?
発声練習中や練習後に喉が痛むのは、声帯に負担がかかっているサインです。
無理に練習を続けると症状が悪化する恐れがあるため、まずは声を休めることが最優先です。
喉の痛みを和らげる方法は以下のとおりです。
- 水分補給:常温の水をこまめに飲み、喉の乾燥を防ぐ
- 加湿:加湿器を使ったりマスクを着用して、適度な湿度を保つ
- 刺激物を控える:喫煙やアルコール、辛い食べ物は避ける
- 十分な休息:声を出さずに休むことで、声帯の回復を促す
- 温める:首や喉をマフラーなどで温め、血流を良くする
痛みが長引く、声が枯れる、違和感が続くといった場合は、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
また、カラオケで喉を傷めそうになったときの注意点は以下の通りです。
✅ 炭酸やお茶系のドリンクは避ける(炭酸はゲップが出たりお腹が膨れるので、腹式呼吸が難しくなります。お茶は喉の油分を奪うため、ステージドリンクとしては不向きです。)
→カラオケの時はハチミツや生姜湯、リンゴジュースなどがおすすめです。
✅ カラオケ前には、お腹いっぱい食べすぎないこと(お腹いっぱいになると、腹式呼吸がしにくくなります。)
→鶏の唐揚げは、油分で喉を潤すのでおすすめです。
喉の健康は発声練習の土台です。
無理をせず、痛みを感じたら「休む勇気」を持つことも大切です。
発声練習だけで歌が上手くなりますか?
発声練習は歌唱力を高めるうえで非常に重要ですが、発声練習だけで歌が上達するわけではありません。
発声練習を続けることで声の響きや安定感は大きく向上しますが、歌の実践練習と組み合わせることで初めて総合的な歌唱力が高まります。
そのため、発声練習で声の基礎を整えつつ、好きな曲を実際に歌って練習することをおすすめします。
発声練習におすすめの時間帯は?
朝よりも昼以降〜夕方が最もおすすめです。
朝は声帯がまだ起きていないことが多いため、無理に高音を出すと喉を痛めやすくなります。
午前中に練習する場合は、軽くストレッチやハミングで声帯を温めてから始めると安心です。
まとめ

発声練習は、正しい方法で継続することで歌唱力や話し方の向上につながります。
基本となる「姿勢」と「腹式呼吸」を意識しながら、リップロールやタングトリルなどの効果的な練習を取り入れていきましょう。
自宅でも声を出さずにできるトレーニングや腹式呼吸の練習など、取り組みやすい方法はたくさんあります。
練習スケジュールを作成したり、小さな目標を立てたりすることで継続しやすくなります。
無理のない頻度で練習を続け、喉のトラブルに注意しながら習慣化していけば、少しずつ確実に上達していきます!
発声練習を日常に取り入れ、音楽や歌うことの楽しさをさらに広げていきましょう。